あなたは、どの建築士と家づくりがしたいですか?
みなさんの思う建築士とは、いかなる存在でしょうか?
先生? どこにでもいる人?
一般の人ですと有名建築家の名前くらいは知っている。程度ではないでしょうか?
そこで、建築士とは何者なのかを紹介します。
まず、建築士といっても、色々であることをご存知でしょうか?
1級、2級とかの種別のことを言っているのではありませんよ。
建築士とは――
資格名であって、業務内容をしめすものではありません。
建築業界の仕事は幅が広く、一人ですべてをこなせる訳ではありません。そのため、専門性を持って仕事をしています。
ここでは、あまり知られていない建築士の業務内容について書きます。
建築士の分類は――
- 設計と監理(商業系、住居系、特殊系)
- 構造設計
- 設備設計
- トレーサー
- 施工監理
- 施工管理
- その他(作業員、営業職など)
に分類できます。
1. 2. 3. 4. は一般に設計業務といわれるもので、5. 6. は工事業務、7. は資格は持っているけど・・・て感じですかね。
といわれても、わかりづらいと思いますので、それぞれの項目を順次説明していきます。
1. 設計と監理とは――
みなさんの思う設計者のイメージでよろしいと思います。ですが、その中身に違いがあります。
・商業系
店舗やホテルなど商業施設を得意としており、デザインやイメージを優先する企画や計画の立案をメインとしていて、その道で有名なデザイナーやプロデューサーなんかもいます。図面は 5.設備設計 6.図面制作 にアウトソーシングすることが多いです。
・住居系
住宅やマンションなど住居設計を得意としており、企画や計画の立案から施工にむけた基本設計までしています。
・特殊系
病院、寺社仏閣、文化財、超高層など、建築中をあまりお目にかかることのないランドマーク的な建物がここにあたります。それぞれの建物が独自のノウハウの塊で専門設計を必要し、だれもが設計できるものではありません。
商業系や特殊系ではコラボと称して、有名デザイナーがイメージデザインのみ行い、その他すべては専門設計事務所がおこなう。
この流れでも、一般的には「〇〇の設計」といわれちゃいますね~。
ただしくは、「〇〇のデザイン」ではないでしょうか。
2. の構造設計とは――
基本設計図をもとに、より具体的に実際の建物を建てるための躯体図(構造図)と躯体図のとおりに建築した場合、強度が基準を満たしているかを計算(構造計算)により確認します。
3. の設備設計とは――
特殊な建物を設計する際には、設備も特殊であることがほとんどです。その場合は専門知識を有する建築士に依頼します。それがここに該当します。
4. のトレーサーとは――
「建物を設計する」といっても、いきなり図面を書くわけではありません。
はじめにコンセプトや空間構成を考え、まとまればデザイン画をつくり、さらにすすめて図面のもととなるラフプランを制作する。
そのあと模型などをつくり、実際に建つであろう建物に近い状態でイメージのズレや不具合の修正をおこないます。
この状態で設計の80%は完了です。
あとは図面を制作するばかりですが、ここで本題のトレーサーに任せます。
様は、図面を書きあげる人のことですが、ここでも技量によりわかれるのです。
アルバイト的にこなす人、その後の工事のことを考えて制作してくれる人、まちまちなのが現実です。
5. 6. の施工監理と管理とは――
みなさんの思う建築士のイメージは、打ち合わせし、図面を書くことだと思いますが、
じつは建築士には、もう一つ大事な役割があります。
それが、監理です。
監理とは――
建物を建築していく途中で、コンセプトの是非、図面の可否、現場と図面のそご時の当否、材質の品質基準の合否など、設計者の意思と図面内容を現場に正確に伝達する役目です。
ここがとても大切なことで、
建築や法律の正しい知識のある人がおこなうことで、建物の出来栄え、欠陥の有無などに違いがでます。
大規模建築を扱う建設会社であれば、監理だけを専門とする建築士が何人もいるのがうなずける仕事量と重要性があります。
では、管理とはなんでしょうか?
管理とは――
簡単にいえば、手配師です。
職人さんや材料の手配、施工詳細図の手配、作業手順や工程の管理、工事予算の管理など、現場を円滑にすすめることがメインの仕事です。
管理もまた、なくてはならない仕事なのですが、管理の経験しかない者が監理をすると、ろくなことになりません。
建築の本質を知ってか(知らずか)、現場がうまく回ることを優先させてしまうため、このような環境下では瑕疵がおこりやすいのも事実です。
監理と管理は似て非なるものなのです。
7. その他(作業員、営業職など)とは――
なんじゃこりゃ?
と思われるかもしれませんが・・・じつは、建築士として稼げる人はごくわずかです。
設計がしたくて職務希望を出しても設計人員は多くはいらないので、夢のかなわない人はたくさんいます。
実際に私の時代もそうでした。私以外に設計を希望する者が3~4名いたのですが、私以外は工事部門にまわされました。
また、たとえ建築士の資格を持っていたとしても給料面から営業職につく人もたくさんいます。
昨今では技術革新がすすみ、工事期間が短くなっているので2年も3年もかかるプロジェクトは少なくなりました。
監理や管理の人員も必要なくなってきていると聞ききます。足らないのは職人さんだけです。
だから作業員・・・悲しい話です。
結論、建築士とは――
建築士の資格があるからといって設計や図面制作のプロでもなく、建築全般に精通しているわけではありません。
どの分野から業界入りして、どんなスキルを身につけたかにより得意分野がちがうのです。
あなたが家をつくるなら、どの建築士さんに頼みたいですか?
おまけ
建築士は、故・田中角栄が建設大臣の時に発足しました。当時は戦後復興から脱却を果たし、さらなる豊かさを求めて建築ラッシュに入りました。それまでの法律、建築家、大工の棟梁に頼った建築では限界に達したため、法律と資格の整備が求められ急速にすすめられます。その際に、建築はすそのの広い業界のため、本来なら細分化していくべきところを逆に、なんにでも対応できる資格にしたため、守備範囲の広すぎる中途半端な資格となりました。
後日、種類分けや細分化目的の資格もつくられましたが、建築士がなんでもできてしまう使い勝手のよい資格のため、あとからできた資格があまり浸透していません。
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